FAZER LOGIN宿場町に到着すると、名前の通り殆ど宿泊宿が多い街並みだった。 ニーナが馬車を停めながら説明してくれた。 石造りの建物が街道沿いに並び、旅人用の酒場や武具屋、馬車修理屋まで揃っているとの事だ。 昼間だというのに大通りは活気に溢れており、冒険者、商人、貴族やその傭兵達が行き交っていた。 馬車の駐車スペースに荷車を置いて、馬も休憩させる為に馬屋に預けさせて、宿場町の通りを一通り観光する事にした。「おい、見ろよ。あの姉妹……」「貴族か?」「バカ、ローゼリアの女王とその妹だ。他国の女王が直々にドワーフ王国に何か用事……」「武具が必要って事は、どこかと戦争をおっ始めるつもりじゃねえか?」「それに護衛メイド2人の気配が違うぞ……」 どうやら俺とニーナは未だロイヤルメイド服な為、セレナとシグルーンの護衛メイドだと勘違いされているらしい。 それもそのはず、俺は女王になったとはいえ戴冠式もしてないし、隣国はラヴレスト王国くらいだからな。 ドワーフ王国の領土どころか、冒険者パーティなら知らないのも無理はない。 俺は4人に《念話》で会話する事にした。(余計なトラブルは起こしたくないし、皆がそう思ってるならそう思わせよう)(わかりました。私は誰のメイドと思わせますか?) ニーナの質問にセレナが食い気味に答えた。(私は断然、クロエ様が良いですわ)(私はニーナをメイドとして呼ぶわ) メイドが好きなニーナはウキウキで答えた。(わかりました。以後シグルーン様とお呼びします) そのまま俺達は、主人と護衛メイドという設定で動く事になった。 俺もここから口調を変える事にした。「ドワーフ王国へ向かう連中が多いですね」 「えぇ、特に最近は武具需要が増えているらしく、各国の商人達も集まっています」 商人達にとってはここで稼ごうと、露店商を開く事が多いらしいが……回復アイテム等は若干割高となっているのは仕方ない。(通常時がコレですから、クロエ様の宝石による輸出が増えれば、この宿場町も人が更に増える事でしょう) 露店商が並んでおり、少し歩くだけでも次々と商人達に声を掛けられたが、回復系アイテムは特に要らない為スルーしていた。「ささっ、そこの王族のお嬢様達、この武具を見てってくださいよ! これはドワーフ王国産の武具だよ」 武器商人に勧められて少しだけ見させ
翌朝。 太陽が昇り始めた頃、森の中を吹き抜ける風は心地良く、木々の葉を静かに揺らしていた。 朝靄に包まれた森は、地球の田舎道みたいで少し懐かしかった。 まぁ……盗賊も魔物も出る時点で平和とは程遠いんだけどな。 だからこそ、どれだけ頑丈な馬車を用意していても油断は禁物だった。 俺達は王城で一泊した後、ラヴレスト王国の正門前へ集まっていた。 ここで、リチャード達とは別れる事になる。 馬車の窓を開け、俺は最後に感謝を伝えた。「改めて、ありがとうございました。リチャード王」「だから王呼びはやめろっての!」 リチャードは豪快に笑いながら肩を竦める。「俺達はもう友好国なんだ。リチャードでいい」「では……リチャード。色々と世話になりました」「おう、それでいい! 世話になったのはこっちの方だがな。クロエ」 すると、リチャードが後方へ向けて手を振った。「おい、持って来い!」 馬車後方に控えていた作業員達が、一斉に荷物を運び始める。 積み込まれた木箱の中には、三種の鉱石。 さらに、この国の名産品である果実、干し肉、保存食、果実酒まで大量に詰め込まれていた。「こんなに……?」「ドワーフ王国まで二週間近く掛かるから、逆に少ない方かもしれん。だが旅の途中に宿場町で補給もできるから、心配しなくて大丈夫だ」 本当に面倒見の良い王様だ。 いや、俺が今まで出会った王達が良い人ばかりかもしれん、俺の優しさに皆が応えてくれただけかもな。 下手したら、俺の優しさにつけ込んで利用するだけの連中も現れるかもしれないしな。 まさか、王になったらなったで、大変な目に遭うかもしれない。 御伽話みたいに贅沢な暮らしばかりではないんだな……地球の歴史を振り返ったら、王となった人は暗殺されたり、信用していた家臣に裏切られたり……碌な末路を辿ってないな。「それと、私の戴冠式には是非来てください。諸外国との友好関係を結んだ後、正式に日程を決める予定ですので」「わっはっはっはっ! 普通は王が自分で動き回ったりしねぇんだがな!」 それに関しては、セレナとシグルーンも「うんうん」と顔を頷き納得していた。 リチャードは呆れたように笑う。「お前さんは普通じゃねぇ。そこらの軍隊より強いんだから好きに暴れてドワーフの連中を驚かせて来い!」「はい。では、また会いましょう」
王都へ帰還した俺達を待っていたのは、割れんばかりの歓声だった。 三種ドラゴンから採取した宝石は、既に大量に鍛冶屋・宝石商へ運び込まれていたらしい。「リチャード王が帰って来たぞォォォッ‼︎」「三種ドラゴン討伐成功だってよ!」「嘘だろ!? あの未攻略ダンジョンをか!?」 王城へ続く大通りには既に民衆が押し寄せており、窓から身を乗り出す者、酒場から飛び出してくる者までいた。「見ろよ……あの荷車、全部宝石だぞ……」「一生遊んで暮らせる額じゃねぇか!?」「あれだけじゃ済まねぇ……武器、防具、装飾品……全部が変わるぞ」「ラヴレスト王国は、本当に大国になるかもしれねぇ……!」 一番は冒険者ギルドにいた、冒険者達が外にまで飛び出してきた。 冒険者達の視線は、俺達というより荷車へ釘付けだった。 三種ドラゴンの素材は、本来なら国家級依頼でも滅多に手に入らない。 特にサファイアドラゴンの氷結鱗は、高級防具の素材として有名だ。 荷車単位で運ばれているのだから、騒ぎにならない方がおかしい。 リチャードは馬車の窓を開けるなり、いつもの豪快な笑みを浮かべた。「わっはっはっはっ! 今回はキャメロット王国より優秀なクロエ・ペンドラゴン女王陛下の協力により、三種のドラゴンを討伐しただけでなく味方に付ける事が出来た。コレは予想以上の収穫だった!」「途中から隠れてましたよね?」「バカを言うな。王とは最後に立っているだけで勝ちなのだ!」 とんでも理論なのは仕方ないが実際、王が生き残っているだけで良い。 民衆達はそんな事など気にせず、リチャード王へ歓声を送っている。 それだけこの国では、“生きて帰って来る事”そのものが価値なのだろう。 俺は馬車の窓から外を眺めながら、小さく息を吐いた。 ルビー、サファイア、エメラルド――。 三種ドラゴンをアンデッド化した事で、あの鉱山は今後、この国最大級の資源地帯へ変わるはずだ。 しかも今回は、それだけでは終わらない。 王城の中庭には既に、大量のルビー・サファイア・エメラルドが運び込まれていた。 王城でお抱えの鍛冶職人に加工してもらう事で防具・武器、はたまた7人の妻達の宝石やネックレスにもする事が出来る。 ある意味、7人分の宝石を買う無駄金を節約には十分だろう。「リチャード王よ! 見てください、この量を!」 興
水浴び休憩が終わり、俺達はエメラルドドラゴンのエリアを進んでいた。 先程までの極寒地帯とは打って変わり、空気は生暖かく湿っている。 洞窟の中とは思えないほど草木が生い茂り、足元には柔らかな苔が広がっていた。 まるで大自然豊かな森を彷彿とさせる、ダンジョンエリアとなっていて罠も無ければ、襲ってくるモンスターさえいない。 逆にそっちの方が不気味感がある、周りは木々があるせいで歩く場所が無い。 だが真っ直ぐ続く獣道のせいで、俺達は誘われているのだと覚悟している節がある。 だから皆、ここまで来ても言葉を発する者が誰1人として現れない。 天井から垂れ下がる蔦は淡い緑色に発光し、まるで森そのものが呼吸しているように脈動している。「……ふぅ。今度は森林エリアか。ダンジョンの中とは思えんな」 静寂を破ったリチャード王が周囲を見回しながら呟く。 確かに異様だった。 さっきまで氷に閉ざされていた空間から、数分歩いただけで巨大森林地帯へ変貌している。 しかも――妙に静かだ。 鳥の鳴き声もない。 虫の羽音すら聞こえない。 あるのは、草木が揺れる“ザワ……ザワ……”という不気味な音だけ。「皆さん、気を付けてください。この森……私達の魔力を吸っています」 ニーナの言葉に、全員の表情が変わる。 言われてみれば、体内の神魔力が僅かに削られている感覚があった。 地面を一歩踏み締めるだけで、魔力が地面に流れていく感覚があり、それは周りの木々に循環していた。「コレは……?」 俺の肩に粘っとした液体が垂れてきて上を見上げるとーー「食人植物!?」 木々の枝から絡み、ハエトリ草みたいななのが吊り下がり、俺に向かって薔薇状の鋭い蔦が上下のギザギザ歯を彷彿とさせている。 ヴィクトリアが食人植物に向かって、炎を纏った剣で切り裂いてくれて助かった。『ご無事で何よりです。マスター』「ありがとう」 周りの天井を見上げると、冒険者達が数多の食人植物に捕まり魔力や、体液を吸われてミイラ化していた。 シグルーンは襲い掛かる植物を、火属性付与した剣で切り裂きながら答える。「私達も気をつけないと、ミイラになるみたいね」「おっと、俺の事は気にしなくても平気だぜ、《鋼鉄化》!」 土属性魔法発動したリチャード王は、体を性質変化させて鋼鉄に変えてハエトリ草から身を守った。
ルビードラゴンの部屋を後にして、俺達は次の通路へと進んでいた。 だが、数分も歩かない内に異変が起きる。「……寒い?」 吐いた息が白く染まり、洞窟の壁には霜が張り付き始めていた。 先程まで鉱山特有の熱気が籠っていたはずなのに、今は真冬の吹雪の中へ放り込まれたような寒気が全身を刺してくる。 足元を見れば、水溜まりが凍結して透明な氷へと変わっていた。「これは間違いなくサファイアドラゴンの仕業ですな」 ゼルンが肩を震わせながら、白い息を吐く。 さらに奥へ進むと、洞窟の景色そのものが変貌していた。 鉱石だらけだった岩肌は、青く透き通る結晶に覆われている。 天井からは巨大な氷柱が無数に垂れ下がり、壁にはサファイアの鉱石が隆起していた。「綺麗……」 セレナが思わず声を漏らす。 まるで氷の神殿。 だが、その幻想的な景色とは裏腹に、空気中に漂う冷気は明確な殺意を持っていた。 アンデッド兵士の一体が前方へ進んだ瞬間――。 パキィィン‼︎ 突如、青白い閃光が走り、兵士の半身が一瞬で氷結する。 閃光が放たれた場所を見ると、綺麗な蒼白色の鱗をしたドラゴンの群れがいた。 これはロックドラゴンがサファイアを食べて「フロストドラゴン」に成長した姿らしい。 両翼を羽ばたかせるな否や、空気中の水分を瞬時に凍結させて「氷の礫」を大量に放ってきた。 氷の暴風で更に凍えそうになり、呼吸をしただけで肺にも氷のダメージを与えようとしていた。「ローリエ、お願い!」 俺の魂から出てきた1人娘ローリエ……と共にモードレッドが一緒に出てきた。『はい、クロエお母様!』「任せてください、クロエお義母様!」 ローリエはともかくモードレッドは神魂教に入り、俺を信仰してくれた事で神聖体になれたみたいだな。「全ての敵を一ヶ所に集めます! 《グラビティーホール》」 ローリエが神聖魔杖を掲げると、漆黒のブラックホールが発生してフロストドラゴンの群れは羽ばたいても、引っ張られる重力からは流れる事は出来ず。 各一定の場所に集められた瞬間。『灼熱の暴風に飲まれなさい。《フレアストーム》』 ローリエが放った火・風属性混合魔法により、炎の暴風に飲み込まれて弱点である火属性ダメージを与える事ができた。 フロストドラゴンの群れを倒しても、このエリアの凍えるような寒さが消える事はなか
休憩を終えた労働者達が鉱山の中に戻って行く最中、俺達はロックドラゴンが現れたダンジョンゲートを見つめていた。 監督官の男が、額の汗を拭いながら説明してくれた。「このダンジョンゲートの中はどうなっているか分かりません。中に入って行った冒険者達は戻って来た事がありませんので」「ロックドラゴン程度なら冒険者パーティでも倒せたみたいだけど、。三種ドラゴンは倒せなかったんだな」 ダンジョンゲートに潜入してみる事にした。 中は鉱山と変わらない洞窟型のダンジョンとなっている。周囲には破壊された採掘道具、壊れた武器。 中には喰い殺された冒険者の遺骨が転がっている。それだけで、この先の危険度が嫌でも伝わってきた。 地図を展開すると広大となっていて、まだ未攻略だからマッピングすら出来ていなかった。「とりあえず皆、攻略をお願いするよ!」 俺の魂から亡者騎士団・戦闘モードの二足歩行型兵隊アリ達がダンジョン攻略を開始してくれた。 アンデッド兵士達が進む度に地図が徐々に広がって行き、敵と認知された赤く光るロックドラゴンの点滅が消える。 地図を皆に共有してあり、それを見たリチャード王が答えた。「俺達はただ歩いてるだけかよ! こんな冒険者共は見た事ないぞ。それにダンジョンマップまで見えるなんて……普通は迷子になったりして、トラップを警戒したりするもんだぞ?」「トラップも予め皆がわざと引っかかったお陰で、後から来る私達は発動しないので大丈夫ですよ」 足元のスイッチを押された後があり、天井からドラゴンの炎のブレスが発動して焼け焦げた大地となった場所、氷のブレスで大地が凍結した場所等がある。「他の冒険者達も罠に引っ掛かったんだな」 焼け焦げた遺骨・未だ凍結されたままの冒険者達を弔いながら進む。「地図をみると三つの部屋に、それぞれドラゴンがいる可能性がありますね」 真っ直ぐ進むとルートに別れていて、ロックドラゴンよりも大きいのが三つ点滅していた。 他の兵隊達もドラゴンと戦闘しているのか、急激に神魔力量の減りが早くなった。 一つ目の開いた部屋に進むと、竜の鱗状となったルビーが精製されたルビードラゴンがアンデッド兵士達をルビーの鉤爪で切り裂いていた。『グルギャオオオオオオオオッ‼︎‼︎』 ルビ







